ある日、オンラインでお話ししていたときのこと。初めてジャズを聴くという方に「オススメのCDはありますか?」と聞かれて、いそいでオーディオの周りを見渡しました。
ジャズを聴いてもらえるチャンス到来。それなのに、素敵な答えを用意していないことに内心ちょっと慌てたわたし。最近聴いていた中から「そうだ、これは気に入ってもらえるかも」と、幾つかアルバムをピックアップしてご紹介。
これは面白いと思います!!
自信を持ってお伝えすると「へ~ジャズってそういう感想なんですね “面白い” かあ」と返ってきました。面白い。そうなのです。私にとって、ジャズのステージは面白く思わず笑ってしまうものなのです。
ジャズの可笑しなコンサート
コンサートのステージといえば、緊張感に、晴れ舞台。
クラシックでもロックでも、コンサートとは、リハーサルを重ねにかさねて、一糸乱れぬピシーッとした緊張感があるもので、あらかじめ決めておいた一連の流れをやり遂げるもの。
深く考える機会もないまま、コンサートとはそういうものだと思っていました。が、、。思い込みがサクッと覆される瞬間は、とても気持ちのいいものですね。
+.(‘v`)+
ジャズコンサートのステージは、私の思うコンサートとはかなり違うものでした。
本番中のステージで、ミュージシャンたちが談笑しているのを見た時には、心の中で笑いがこみあげ、震えました。
誰かがソロを演奏しているその瞬間に、他の奏者が朗らかに談笑したり、楽器のお手入れをしているのです。
クラシックコンサートなら、ソリストが演奏している最中に、他の奏者がおしゃべりをするなんてちょっと想像できない光景です。
白熱しているピアニストの演奏を楽しそうに眺めつつ、サックス奏者とトランペット奏者がコソッと「今日も凄いな!」と、感激しあっているかのようでした。ドラマーがギタリストを呼び寄せて「次あれやろうぜ!」と言っているようにも見えました。
ちょこちょこっとしたおしゃべりが、ステージのうえで起きている。
しゃべってる..。
笑ってる..。
おまけに水までのんでいる..!!
ステージの上では、きちんとする。
水をのんだりできるのは楽屋だけ。
そう思い込んでいた私には、え!しゃべってる!水ものむの?いまのむの??と、心のなかで笑いころげ、不思議な高揚感にもつつまれました。
ステージ上のミュージシャンたちの行動は、私の目にはどこをとっても型破り!そんなふうに見えたのです。
メモのような不思議な譜面
ジャズコンサートのステージ上のおしゃべりは、無邪気な雑談、というわけではありませんでした笑。
大きめのコンサート会場での演奏は、照明や音響のスタッフさんもいますから、タイミングをあわせるために、あらかじめ演奏曲も曲順も決めておくことが多いだろうと思います。
面白いのは、ほぼミュージシャンだけでステージを作りあげる小さな(ライブハウスなど)場所での演奏です。
開演前、楽器をセッティングするミュージシャンたちを見ていると、よく、こんな会話が聞こえてきます。
「今日あれやらない?」
「お、いいね!」
「いちおう譜面ももってきた」
いちおう譜面ももってきた…。
ミュージシャンの前には譜面台も置きますし、譜面らしきものものっています。でも、そこに書いてあるものは、クラシックしか知らない私にとっては、譜面と呼ぶには簡単すぎる、メモ書きのようなものでした。ほんとうにメモのこともありました。
この記号だけで演奏してる..?
凄いもの(世界)を見つけてしまった感覚でした。音符が書いてある譜面もあるにはあって、音楽家たちもそれを「譜面」と呼んでいます。でもその中身のほとんどは、記号や点で埋められていて「暗号」にしか見えません。
本番中の朗らかな「談笑」にみえたあの光景は、演奏の進行を決めるために必要なステージ上の「プチうちあわせ」なのですね。
譜面がないから(あるけど)、白熱したピアニストのソロだって、いつ終わるのかわかりません。曲調も、どんなふうに走りきるつもりなのかも、もしかすると演奏している本人にだって分からない。現場を見ながら進行していく、あのプチうちあわせは、なくてはならない談笑でした。
演奏しながらみんなで作曲してるんだ。
少しずつそんなことに気がつくようになっていきました。目のまえで音楽が生まれてくるのを目撃できる。そんなところがジャズライブの楽しいところ。私の好きなところです。
機会があれば、ぜひ、ジャズミュージシャンに不思議な譜面を見せてもらってくださいね+.(‘v`)+
譜面がなくても演奏できる
いちおう譜面ももってきた、というくらいですから譜面がなくても演奏できるジャズミュージシャン。譜面がないことを実感できる、おもしろいシーンも見かけます。
(アンコールの拍手がつづき..)
「アンコールありがとうございます!」
「じゃあ、、なにやろうか」
ミュージシャンたちがステージのうえで一瞬集合。そして、まだ誰も「あの曲は?」などと発言していないはずなのに、突如、誰かが演奏を始めてしまうこともありました。見ている私は(お客さん)ハラハラです。
あれ!大丈夫?
曲決まってないよね?
大丈夫?
ピアニストが演奏を始めてしまうこともありますし、ドラマーがリズムを刻み始めることもありました。誰かが演奏をはじめると、他のメンバーはほんの少しそれを眺め、「お!いいね!」「あああれね!」という感じで、曲に雪崩れこんでいくのです。
わかるんだ!!
客席でホッとしながらまた感動。ただそこで「あああれね!」と気がつきながら、慌てて(メモのような)譜面を探しまくるミュージシャンがいるところも、また可笑しい。待って待って…あるある…あった!!ハラハラします。
+.(‘v`)+
ジャズミュージシャンの体にしみこんだ音楽は、数えきれないほどあるようで、それはもう、暗譜というピアノの発表会のまえにだけ、懸命に覚えるあの感じとは次元がちがってかっこいい。
音楽がミュージシャンの体から染みでてしまう感じです。
いつどうやって染みこんだ音楽なのか。どうやって染みこませるものなのかは、まだ解明できていない(質問しても答えがかえってこない笑)不思議で素敵な謎のまま。
交わす言葉のかわりにジャズがある、きっとそういう感じなのかなと思います。
わかろうとしなくても楽しいジャズ
自由が丘のソファのあるカフェでコンサートを企画開催していたときは、小さなお子さまと一緒に来てくださるお客様も多かった。
そこで見ていて感じたのは、子供の楽しみ方は素晴らしい!ということでした。
背をむけて全然聞いてないのかなと思ったら、突然ソファーのうえで踊りだす。
ママの膝からドラムのソロに釘づけで凝視したまま動かない。
激しい演奏の応酬に、会場が爆笑するほど素晴らしいタイミングで、奇声をはさんでくれた赤ちゃんもいましたね。
そんな素直な反応に大人たちのほうがびっくりです+.(‘v`)+
その場で生まれる音楽は、その場にいる人たちと有機的につながって、一つの大きな音楽になっていく。音楽を純粋に感じとることのできる機会は素晴らしい。ジャズの現場で、今日ここで、どんな音楽が生まれるのか、ぜひ体験体感してみてほしいと今日も願ってやみません♡