ジャズライブのある景色

子どものあたまは音楽でいっぱい!大人のあたまは言葉で満たん。

jazz-singingkids

小さい子って、よく歌っていますよね。時にはずーっと歌いっぱなしのこともある。幼稚園や保育園で教わるからなのか。人は歌う生きものなのか。

昼間のローカル電車では、小学生の男の子たちがどどどっと一斉に乗ってきて、そのまま輪になって歌い始めることもある。自転車の荷台に乗った小さな子も、ママと一緒に大声て歌いながら通り過ぎていく。

小さかった甥っ子も、遊んでいると、流行りの曲、CMの曲、てきとうな歌と、それはもう次々と口ずさんでいくのを感心しながら眺めていました。止まることなく数珠つなぎ!

面白い “覚え間違い” をしているのに気がついたときは、「もう一回うたって~」とお願いしますが、そうすると今度はなかなか歌ってくれない笑。

大人の知恵を働かせて『ジングルベル』だけは、もう一回歌ってもらうことに成功したので、『ジングルベ~ルジングルベ~ルすず “ながる~” 』と、サンタさんに聞こえるように大声で歌う様子は、しっかり動画に収めてあります。

大人だって、たとえ口ずさんでいなくても、脳内で曲が流れていることはありますし、人間は、音楽とともに生きているのが “自然な姿” ということなのかもしれないなあ、なんて思いながら見ています。

子どもはジャズミュージシャンが大好きらしい

東京自由が丘で4年間開催していた『日曜日のジャズライブ』。このカフェは、住宅街のすぐそばにあり、表通り沿いの開口部は “大きな窓” になっていました。

月に一度(か二度)、日曜日の夕方。ミュージシャンたちが楽器を持ってやってきます。それぞれの楽器をセッティングして、徐々にサウンドチェックが始まりますが、そんな様子も、全て外からまる見えです。

一流のジャズミュージシャンたちが出演してくれるライブだったこともあり、大きな窓から見えているミュージシャンのサウンドチェック姿にも、やはり独特の “存在感” がありました。

窓の向こうに立ち止まって、店内を珍しそうに眺める姿を見かけると、私は急いで外にでてフライヤーをお渡ししながら、皆さんとちょっとした会話を楽しみました。

「なにやるの?あ、ジャズなんだ」
「あ、今日やるんだね。へ~いいな」
「ジムやめて、こっちにしようよ♡」

フライヤーを受け取りながら、そんな会話になっていくことも少なくなく、そのあと本当に来てくださる方も多かった。住宅街にあるってこういうことなんだと、嬉しい流れを実感することができました。

「ぼくは帰らない」と背中で語る男の子

そんなある日、店内でサウンドチェックが始まって、窓の外を眺めていると、かるく十年以上は会えていなかった友人の姿を見つけて驚きました。

秘書を卒業して、初めて実務の仕事をもらったときに同じチームになった元同僚です。さらさらの髪に、花のような豊かな笑顔のMみちゃんは、小さな男の子の手をひいていました♡

その小さな彼は、私たちが感動の再会をしている間に、ミュージシャンのサウンドチェックにすっかり夢中。

まだ読めないはずの渡したフライヤーを握りしめ、足をしっかりふんばって、背中で「絶・対・に・帰・ら・な・い」というつよい意志を見せています。

サウンドチェックが終わっても、ミュージシャンのあとをついてまわり、すっかり離れなくなりました。

楽しそうにミュージシャンたちを見あげては、膝に抱きつく彼の姿は、それはもう可愛くて、「ここにいたい」というサイコウの意志表示になっています。

笑いながら、帰ることを諦めてくれたママと一緒にテーブルにつき、1st セットがはじまって少ししたころ、彼のパパも合流です。こちらも、私にとっては元同僚。こんな日曜日になるなんて。彼らはしばらく東京にいなかったこともあり、信じられない光景を見ているような気持になりました。

イベントを企画するということは、誰かの今日の予定を変えること。そんなことも、面白いなあと思います。

そういえば、ミュージシャンたちもまた、窓の外を通る人と偶然の再会をしていることがよくありました。

顔が広いからかもしれません。でももしかしたら、世の中にある「壁」は、本当はもっとあるかもしれない “こんな機会” を、たくさん遮っているのかもしれないですね。

窓ってすごい!窓っていい!と、今ではすっかり窓のあるお店のファンになっています。

窓にはりつくサッカー少年

ある夏の日に、今度は、サッカーの練習からの帰りだという少年が窓の外にやってきました。練習場に迎えに来てくれたお母さまと一緒です。

少年は、サウンドチェック中のミュージシャンにすっかり釘づけになってしまい、渡したフライヤーをしっかりにぎり、帰りたくなさそうにしています。

「シャワー浴びて、またここに戻ってくればいいじゃん!」


不器用にお母さまを説得しようと頑張ってくれていました。そんな風に思ってくれるんだ…と感激。こんなシーンに出会うことができて心から嬉しくなりました。

私がジャズライブを企画しなくても、一流音楽家たちの演奏は、毎日どこかで聴くことができます。

いま足りていないのは、そこへの道案内だけなのだと、街ゆく人たちと話したおかげで、確信は強くなっていきました。

いい音楽を聴きたい人はたくさんいます。
まだまだ、出来ることがありそうです。

子どもに教わるジャズライブの楽しみ方

子どもたちは、素直に楽しむのが上手ですね。
ジャズライブでも、素直に反応する子どもたちの良い影響をうけ、大人たちもどんどん自然体になっていくように感じます。子どもが大人に、素直な反応の仕方を思い出させてくれるのです。

子どもに音楽ジャンルは関係ない

カフェでのライブでだけでなく、お寺の本堂で開催したジャズライブでも、子どもたちは、音楽を楽しんでくれているようでした。

私の企画は、そういうわけで、常にお子さまWELCOMEですが、出演ミュージシャンの皆さんには、子ども向けに選曲をしてもらうようなことはお願いしていません。

椅子に座れる年になったからと5歳の男の子を連れてきてくれた家族がいましたが、親の意に反し、ライブ開始と同時に彼はママの膝から離れなくなってしまい、最後までママの膝でもぞもぞして甘えていたので、「ああまだ早かったのかな~」なんて思って笑って見ていました。

ところが!家に帰りついてから、彼は、演奏曲を口ずさみはじめ、ドラム、ウッドベース、テナーサックス、と、それぞれの楽器(楽器名はわかっていない)の登場の様子を披露しながら再現して見せてくれたというのです。

大人の思う「ちゃんと聞く」ではないんだな。

彼らには、彼らの聴き方があることを知りました。そういえば、カフェのライブでも同じようなことは、よくありました。

ソファーで絵本に夢中なのかと思ったら、軽快なリズムが鳴り出したとたんにその場でぴょんぴょん踊り出す。これは本当によくみた光景で、なんというか身体全部で音楽を受けとめているんだろうなと感じます。なんとも羨ましい素直さです!

大人のあたまは言葉でいっぱい

子どもにいい音楽を聴かせたいと思うとき、私たち大人は頭で “たくさん” 考えます。あたまの中に “言葉” を満タンにして、溢れさせて考える。

音楽を楽しむ子どもたちの様子を見ていると、ふと、子どもには特別なことはしなくていいんだと思えてきます。

いい音楽を聴かせたいと思ったら、一緒にいる大人たちを楽にしてあげる方がいい。

演奏曲は、大人むけのままでもいい。但し、バラードよりは、リズムが楽しい曲がいい。ライブ会場に来てくれる子どもたちの姿を目で追いながら、そんなことを考えるようになりました。

ABOUT ME
atsuko
イベント・ジャズコンサートの企画コーディネーター。ソニー(株)退社後、2015 年秋に独立。ジャズコンサートとリスナーとの新しい出会い方を提案する「小さなコミュニティに "一流" のジャズを届ける企画」に奔走中。活動テーマは『今日が大切な日になるように』